診療のご案内
長引く咳には多くの種類があり、様々な病気の原因である可能性があります。
以下のように急性、遷延性、慢性と発症してからの時間で区別されています。
急性は、異常所見があっても良いのですが、残りは、異常があるものは含まれません。
この分類から受け取るべき大切なメッセージは、せきが3週以上続くのかどうかということです。
さらにもう一つ、このメッセージに加える大切なことは、痰がでるのかどうかです。
質問の答えが3週間未満のせきで、痰がでるでないのいずれの場合は、代表的な病気として考えられるものは、普通感冒、インフルエンザ、急性気管支炎、急性 鼻・副鼻腔疾患、慢性気道疾患の急性増悪、肺炎などです。
では、質問の答えがQ1で(2)3週間以上である場合は、どうでしょうか?
頻度の多い主な病気は、副鼻腔気管支症候群、上気道咳嗽症候群(後鼻漏症候群)、慢性 気管支炎などが挙げられます。少し難しい医学用語よろしくばりの病名ですが、おのおの手短に説明を加えておきます。
原因は不明ですが、気管支のバイキンを外に出す力が弱まってい と症状がでてくることがあります。
わが国では、頻度としては多いもので、かぜの後に、たん(痰)を伴うせきがでてきます。
その他、 鼻水 、後鼻漏(鼻水がのどに回る)、咳払いなどの症状を伴います。
副鼻腔炎(ちく膿症)の方の80%程度に後鼻漏があり、そのうち40%程度にせきが認められたという報告があります。咳がどうしてでるかというと、以下の2つのことが考えられております。
従来は、タバコや大気汚染などによる気道の慢性炎症により、せきやたん(痰)が、2年以上続き、少なくとも冬期に3ヶ月以上、せきが毎日みられるものと定義されていましたが、現在は、ほとんどタバコによるものが多いようです。
痰を伴わない乾いたせきの場合、アトピー咳嗽と咳喘息が二大原因として考えられます。
わが国で二大原因とされているものは、咳ぜん息(cough variant asthma)とアトピー咳嗽です。
その他、胃食道逆流症(GERD)、感染後のせきなどが原因として多く挙げられます。
この2つの病気は、感染症ではないアレルギー性のもので、症状が非常に似ております。
しかし、まったく違った病気ですので、病気への取り組み方も違ってきます。
まず、咳喘息は喘息の前の段階とされており、通常の喘息とは、喘鳴(ヒューヒュー、ピーピー、ゼイゼイ)がない点が異なります。咳がでるのは、気管支の収縮のためです。
このため咳喘息の治療に用いられるのは、気管支拡張薬が主体となります。
この気管支拡張薬には、咳を止める作用はないので、気管支拡張薬によって咳嗽が軽減する場合は、咳喘息だけとなります。
そこで、まず気管支拡張薬を投与し、せきが軽減すれば咳喘息と診断し、引き続き吸入ステロイドなどを使った喘息の治療を開始します。
気管支拡張薬の効果が認められなければ、アトピー咳嗽を疑います。
アトピー咳嗽の基本な病態は、気道の咳受容体の感受性の亢進(せきが出やすくなる)であると考えられており、気管支拡張薬は効果を示しません。
そのかわりに、アトピー咳嗽の診断的治療にはヒスタミンH1受容体拮抗薬が用いられ、咳嗽が軽減すれば、アトピー咳嗽と診断することができます。
咳喘息、アトピー咳嗽ともに重症例に対しては、経口ステロイドが用いられることがあります。臨床的に咳喘息とアトピー咳嗽を区別する意義は予後の違いによります。
すなわち、咳喘息は治療を中止すると約30%が典型的喘息へと移行するのに対し、アトピー咳嗽では、治療を中止しても再発は少ないとされています。