診療のご案内
専門外来をやっていると驚かされるのは、受診される方のなかでも、「眼が乾く」「口が乾く」とは、おっしゃられずに、はじめから「ドライアイ」「ドライマウス」があるという具合に、 マスコミなどの宣伝効果のためか、カタカナの言葉がなじみのあるものとなってきたようです。
それでは、ドライアイやドライマウスがあるかどうか質問です。思い当たるものの番号に○を付けてみてください。⒜~⒞の中で1つ以上、⒟~⒡の中で1つ以上○の方は、症状としては、ドライアイやドライマウスがあるとして良いでしょう。
ドライアイは、涙の量が少なくなることで、眼の動きを滑らかにしたり、 眼についたゴミやホコリなどを洗い流し、 眼の表面を保護し、バイキンがつきにくくしたり、栄養を運ぶという重要な働きが十分に果たせなくなってしまいます。
これにより、 まぶたが重く感じたり、眼が疲れ、ごろごろして、赤くなり、痛みがでたり、 まぶしさを感じたりと非常に煩わしいです。
ドライマウスは、唾液の量が少なくなることで、ものを飲み込むのを滑らかにしたり、 消化を助けたり、バイキンを抑えたりという、唾液による口の中を清潔に保つ働きが十分に果たせなくなってしまいます。
そして、口の中に、バイキンがはびこる結果、炎症をおこし、虫歯や歯槽膿漏(しそうのうろう)の原因となります。その他に、唾液が出ないため、乾燥し、舌や唇がひび割れて、塩辛いものなどはしみて痛み、味がよくわからなくなることがあります。声がかすれること(嗄声)もあります。
ドライマウスの方は、約3000万人いると言われております。
スウェーデンの病理学者であり、眼科医でもあったヘンリック・シェーグレン(Henrik Sjögren)が、女性の関節炎患者には、眼と口の異常な乾燥症状が高頻度に合併することに注目し、1933年に「乾燥性角結膜炎と高度の耳下腺腫脹をともなった関節リウマチの女性患者」として学会にはじめて報告したことから、その名前がつけられた病気です。
関節リウマチなどの膠原病や甲状腺の病気(橋本病)と合併することがあります。男女比は、1:14で女性に圧倒的に多く、発症のピークは 40~60歳代です。だいたい50万人いると推計されていますが、実際に症状があっても診断にいたっているのは、厚生労働省の統計上では7.5万人という結果です。
主に唾液と涙が作られている唾液腺や涙腺が障害される腺症状と腺以外の症状に分けられます。
乾燥することが特徴です。これは、さきほどの「ドライアイ」「ドライマウス」の項にある症状に加えて、気道が乾いて咳がでる乾性咳嗽、鼻が乾く鼻腔乾燥、胃液が出にくなり胃炎をおこす、皮膚が乾いてかゆみがでる、腟乾燥による性交障害、子宮の乾きによる不妊(着床障害)、膵炎などがあります。
だいたいが、腺症状だけですが、ときに腺外症状と呼ばれる症状がでます。以下に簡単に説明をしていきたいと思います。
関節炎が起こることがありますが、関節リウマチのように、関節の破壊が起こることは原則ないとされております。
肺に淡い影が広がり、呼吸が苦しくなることがあります。
原発性胆汁性肝硬変症という病気や自己免疫性肝炎という病気を合併することがあります。
腎臓に炎症を起こすことあります。遠位尿細管性アシドーシスという病態を引き起こし、手足が麻痺することがあります。
手先が、緊張や冷えでロウのように白く変色したり(レイノー現象)、環状の発疹(環状紅斑)や、網目状の発疹(網状皮斑)、紫色の点々としたやや盛り上がりのある発疹(紫斑)がでることがあります。
やや語弊がありますが、分かり易く言えば、血液の中にあるリンパ球のガンとも言える病気です。外国人例で、発症との因果関係が言われております。
筋肉に炎症を起こしたり(筋炎)、末梢の神経に炎症を起こし、しびれがでたり(末梢神経炎)、血液を作る骨髄が冒され、感染症になり易くなったり(白血球減少)、貧血で息が切れやすくなったり、出血(血小板減少)したりします。この他に、疲れ易い、頭痛、気分が不安定、集中力がないことなどがあります。
1999年旧厚生省改訂診断基準に照らしあわせて診断されます。
侵襲や後遺症(生検部の麻痺など)の問題もあり、いきなり、涙腺や小唾液腺を生検するということはありません。生検以外の項目で診断できるか検討するのが第一です。
しかし、場合によっては生検を行います。
今のところ、根本的に治す治療法はありませんので、それぞれの症状を軽くし、良くすることを中心に治療が行われます。
重要なことは、大多数の方は、病気がどんどんと悪化することはありませんので、過度に不安になる必要はありません。むしろ、不安になりストレスがかかると、それが災いして症状が悪くなります。間質性肺炎、腎炎、肝炎、中枢神経障害などがあると経過が良くない場合があります。
一回使い切りタイプのヒアレインミニ®という目薬を頻回に点眼します。
通常の目薬タイプのものでは、防腐剤が入っていて、この防腐剤が長時間眼にとどまり濃縮されることで眼に障害をおこすことがありますので注意が必要です。
なお、あまりにも眼の乾きがひどいときには、眼科で涙の排水口である涙点とよばれる所に栓(涙点プラグ)をします。その他、ゴーグルなどを使い乾燥を防ぎます。
水分を良くこまめにとること、人口唾液をスプレーすること、よくうがいをすること、オーラルバランスなどジェルを使うこと、低研磨・低発泡のハミガキを使うこと、無糖のガム(キシリトールガムなど)を咬んだり、トローチをなめたりすることで対応します。
それでも、何回も、 夜間にのどの乾きで目覚めたり、から咳がひどかったりと、乾燥がひどい場合には、有効性が認められている塩酸セビメリン(エボザック®、サリグレン®)などの薬を服用もしくは、むかつきなどの副作用などで飲みにくい方はうがい(口腔リンス法)をいたします。
使用することによりうける恩恵と、さまざまの起こりうる副作用を天秤にかけて使用します。たとえば、臓器に重篤な障害がある場合には、大量を使う必要がありますが、そうでないときには、原則、使用することはありません。
しつこい熱、唾液腺の腫れやリンパ節の腫れが反復する場合などには、少量から中等量が使われることがあります。