診療のご案内
尿路感染症は、簡単には膀胱炎か腎盂腎炎の2つに分類します。
尿路感染症は、「単純性」、「複雑性」、「上部尿路感染症」、「下部尿路感染症」に分類されます。
単純性とは、健康、閉経前、妊娠していない尿の流出障害のない女性の場合を指します。
複雑性とは、男性、尿の流出障害のある、糖尿病などの併存疾患がある場合を指します。
上部尿路感染症が、腎盂腎炎で、下部尿路感染症が、膀胱炎です。
ここでは、主に単純性下部尿路感染症の膀胱炎について説明させていただきます。
外部から、主に大腸菌などの細菌が、尿道を逆流して膀胱内に入り増殖し膀胱粘膜に炎症を起こす病気です。
通常は、細菌が逆流して膀胱内に入っても、排尿とともに膀胱外へ排出されますが、尿を我慢したりすると膀胱の中で細菌が繁殖し膀胱炎を起こします。
尿を我慢することは良くないことですね。
ほとんどが大腸菌で75~95%前後を占めます。残りがクレブシエラ属やプロテウス属などのグラム陰性桿菌です。
若い方の場合は、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(腐生ブドウ球菌)が一定の割合で含まれることがあります。
複雑性の場合では、緑膿菌や腸球菌、ESBL※産生腸内細菌(稀)などがあります。
※基質特異性拡張型βラクタマーゼ(Extended spectrum β-lactamases:ESBL)
尿を出すときの不快感や痛み、膀胱が恥骨の裏側にあるため恥骨あたりに痛みを感じることもあります。
尿を出したばかりなのに残っている感じがして(残尿感)、30~60分ごとにトイレに行きたくなります。
膀胱内に集まった白血球や分泌物、はがれた膀胱粘膜で濁ります。
(注意) 腰背部痛や発熱がある場合は、腎盂腎炎の可能性がありますので早めに治療を受けて下さい。
膀胱炎は、女性に圧倒的に頻度が多い病気です。
その理由は、
必要な検査は、尿定性検査と尿沈渣検査、そして微生物学的検査(尿細菌培養)を行います。
抗菌薬開始前に、耐性菌の問題があるため微生物学的検査をし、薬剤感受性を確認することが重要です。
尿定性検査では、白血球エラスターゼ(尿中白血球を間接的に証明)と亜硝酸塩(尿中細菌を間接的に証明)を調べます。
腸内細菌は、基本的に亜硝酸塩を産生しますが、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(腐生ブドウ球菌)、緑膿菌、そして腸球菌は亜硝酸塩を産生しないため注意が必要です。
問題のない方であれば、再発予防効果もあるため水を1日1500mL摂取していただきます
(JAMA Intern Med, 178:1509-1515, 2018)。
そして、症状があり、抗菌薬による治療が適切と判断させていただいた場合は、抗菌薬を処方致します。
スルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ ®)1回2錠、1日2回、3日間
または、
セファレキシン1回500 mg、1日3回、3~7日間
(注)妊婦、妊娠の可能性のある女性の場合、スルファメトキサゾール・トリメトプリム(バクタ ®)は、妊娠初期の神経管欠損、新生児核黄疸との関連が指摘されているため処方致しません。