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2020.06.07
トピックス
乳がん 関節症状 関節リウマチ 骨粗しょう症
乳がんで、エストロゲン受容体陽性であると、閉経前はタモキシフェン、閉経後はアロマターゼ阻害薬を使用されることがあると思います。乳がんが、発症しやすい年齢と、関節リウマチが発症しやすい年齢が似ているせいか、乳がん治療を受けてから関節が痛くなったので関節リウマチが心配と相談されることが、よくあります。たしかに、タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬(アリミデックス、アロマシン、フェマーラ)を使用されている方が多い印象です。10493人の検討をしたイタリアからの論文でも、タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬を使用している方が、関節リウマチ になる危険性が高いということです(*1)。アロマターゼ阻害薬の治療を受けていると関節症状を自覚される方の割合は5人のうち少なくとも2〜3人、このために治療を中止しないといけないという場合も、多いと5人に1人くらいと無視できません。トルコからの論文(*2)ですが、新たに乳がんと診断された128人のうち、10人が関節リウマチを発症したという報告があります。関節リウマチは、女性に多く古くから女性ホルモンとの関係を言われておりましたが、この女性ホルモンを少なくする治療で、なぜ関節リウマチが発症するのかは疑問であります。エストロゲンというホルモンを少なくする治療ですから、骨粗しょう症にはなりやすく、このため知らずに骨折をおこして筋骨格系の訴えが多くなります。関節症状は、この骨粗しょう症が原因とも言われておりますので骨密度(DXA)を撮影し、しっかりと精査をすることが大切です。「乳がん」「関節症状」「関節リウマチ」「骨粗しょう症」、この4つをしっかりと評価することを、当院では心掛けております。
*1 Caprioli M et al. RMD Open 2017;3:e000523.(PMID: 29071118)
*2 Figen Tarhan et al. Eur J Breast Health 2020; 16(1):55-60