ブログ
2023.03.28
皮膚科
関節リウマチでヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬服用の方は、帯状疱疹にご注意ください。
関節リウマチでヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬服用の方は、帯状疱疹にご注意ください。最近の印象ですが、今までよりは、帯状疱疹を拝見する機会が増えたように思えます。そこで、帯状疱疹になる方が、実際どのくらいいるかを知らなければなりません。なんと年間約60万人です。結構、多いです。帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)に罹ることが始まりで、それが体にずっと潜み、なんらかのきっかけで再び形を変えて帯状の広がりを持つ痛痒い水ほうとして出てきます。高齢者、免疫抑制状態の方ほど重症化しやすい。女性、家族歴がある、自己免疫疾患が危険因子であることが分かっており、関節リウマチ(RA)の方が帯状疱疹を発病する率は、たとえば関節リウマチとされた1000人の方を1年間みていくと10から20人が帯状疱疹になるという信じ難い数字となります。このヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬により、免疫を司るT細胞の機能が抑制されることや、ウイルスに感染した場合にインターフェロンという物質が出て、ウイルスが体の中で広がらないようにするのですが、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬により、この作用が抑えられてしまうことが帯状疱疹の発症率を上げていると考えられております。帯状疱疹は、一刻でも早く診断され、抗ウイルス薬治療が始められるかが重要な鍵となります。帯状疱疹治療薬の使い分けとして、軽症は、核酸アナログ製剤かアメナメビルの内服、中等症ないし重症の一部ではアメナメビル内服、免疫能高度低下や中枢神経合併症、また鼻にまで波及した帯状疱疹の場合は、入院による点滴治療という選択が大半です。帯状疱疹を予防するワクチンには、生ワクチン(Oka)、サブユニットワクチンのシングリックスの2つがあります。国内では2016年3月に、水痘生ワクチンが50歳以上の帯状疱疹予防として適応拡大されましたが、アメリカでの調査では、その効果は約8年で消失する上、明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する患者や免疫抑制を来す治療を受けている患者は接種不適当とされ、とくに関節リウマチを含め膠原病などでワクチン接種が必要な方なのに、免疫抑制剤を使用しているがゆえに禁忌となり、歯がゆい思いをすることが多々ございます。サブユニットワクチンのシングリックスのアメリカの研究においては、50歳以上の方で、そのワクチンの有効率が97.2%、70歳以上の方で、痛みが延々と続く帯状疱疹後神経痛阻止率が88.8%と高い有効性が示されました。これを受けて日本国内でも2018年3月に承認、2020年1月から販売開始されており、当院でも接種が可能です。アメリカのACIP(ワクチン接種に関する諮問委員会)では、帯状疱疹の予防接種が推奨され、帯状疱疹と関連合併症の予防には、水痘生ワクチンよりもサブユニットワクチンのシングリックスの方が望ましいとされております。関節リウマチで治療中の方へのシングリックス接種の効果と安全性については、日本リウマチ学会ガイドラインでは「安全性のエビデンスは十分でないため、患者のリスクベネフィットに鑑みて使用を考慮」と示されております。
関節リウマチの方のワクチン接種では、再燃発生率が6.7%、副反応は12.7%と、いずれも軽度で許容できるものだったとした上、関節リウマチの勢いが強い状態では、ワクチン接種時期は、少し考えた方が良いとされております。
帯状疱疹は、抗ヘルペスウイルス薬による治療とワクチンによる予防が可能であるため、関節リウマチの病状とその勢いを考えた上で、ワクチン接種を積極的に考えるべきというようになっております。心配のおありの方は、われわれに相談をしてください。