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2023.03.11
皮膚科
アトピー性皮膚炎の病態とヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬
アトピー性皮膚炎は、再発性の湿疹と強いかゆみを特徴とする一般的な炎症性皮膚疾患です。アトピー性皮膚炎は、あらゆる年齢層に負担を強いております。アトピー性皮膚炎は、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎、精神疾患などの複数の合併症の危険度上昇と関連しています。病態は複雑で、強い遺伝的素因、表皮機能障害、T細胞による炎症が関与しております。現在、治療法は確立されていないのですが標的治療薬の増加により、疾患制御が期待されております。関節リウマチ治療薬のヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬が、その一つですが、なぜ関節リウマチの薬を使うのかと言うと炎症を起こすときにJAK-STATという細胞の中にある経路が関係するためです。その中のJAK1というものが、アトピー性皮膚炎の発症に重要な役割を果たす炎症性サイトカインIL-4、IL-5、IL-13の発現に中心的な役割を担っているとされているため、これを抑える関節リウマチのヤヌスキナーゼ (JAK)阻害薬が重宝し応用できるというわけです。アトピー性皮膚炎に対するヤヌス キナーゼ(JAK)阻害内服薬は,2020 年に JAK1/2 阻 害薬であるバリシチニブが適応拡大となり、2021年にはJAK1 阻害薬であるウパダシチニブ が適応拡大,同じくJAK1 阻害薬であるアブロシチニブも適用され2022 年 6 月現在では、 3剤が使用可能となっています。関節リウマチとアトピー性皮膚炎と、専門でない方は、皮膚科の病気なのに、なぜリウマチ科で使う薬を使うのか疑問に思われるかもしれませんが、炎症という言葉でつながっているわけです。これこそ、当院が皮膚科を標榜している理由の一つです。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬は、治療を開始する前に全身検査が必要となる扱いがやや難しい薬剤です。開始したとしても感染症がおこらないか細心の注意を払わなければならないため、リウマチ科であれば日常診療で普通に行っていることですが、そうでない診療科は大変だと思います。アトピー性皮膚炎は、難治性であるがため、いくらかでもお悩みを和らげさせていただきたいという思いで、当院では皮膚科とリウマチ科が協力して積極的に治療しております。
参考文献:
Drugs in Context 2020; 9: 2020-8-5
Lancet. 2020;396(10247):345–360.